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採用の前に、まずインターン。IHI・artience・ワンキャリアが語るインド高度人材受け入れの実践知【日印インターンシップ交流イベントレポート】

2026年7月15日、東京・新橋にて、Tech Japan主催の「日印インターンシップ交流イベント」が開催されました。受け入れ企業によるパネルディスカッションに登壇したのは、航空・宇宙・防衛、エネルギー、社会インフラなどの分野で事業を展開する株式会社IHI、化学メーカーのartience株式会社、HRテック企業の株式会社ワンキャリアという、業種も企業規模も異なる3社です。インドの高度人材に着目した理由から、受け入れて分かった想定外の変化、そして規模の異なる組織それぞれの社内の巻き込み方まで、リアルな知見が語られました。

【登壇者】
下村 琢磨氏 株式会社IHI IHIアカデミー 主幹
上村 知香氏 artience株式会社 グループ人事部 グローバルサポートユニット キャリアコンサルタント
中西 太郎氏 株式会社ワンキャリア 人事部 採用

登壇企業のご紹介

株式会社IHIは、資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械、航空・宇宙・防衛の4分野でグローバルに事業を展開し、従業員数は連結で2.6万名を超えます。下村氏は2025年から同社の経営・専門人財の育成・強化を目的に設立された「IHIアカデミー」に参画し、人財育成の指揮を執っています。

artience株式会社は、色彩・機能性材料、ポリマー加工、パッケージ、印刷情報の4つの領域でファインケミカル素材の開発・提案を行う化学メーカーで、24の国と地域で事業を展開しています。上村氏は人事部門のグローバルサポートユニットに所属し、海外現地法人の人事制度立案や、外国籍社員の採用・定着支援を担当しています。

株式会社ワンキャリアは、キャリアデータを用いて採用マーケットのアップデートを目指すHRテック企業で、提供する就活支援サービス「ワンキャリア」は就活生の3人に2人が使用しています。中西氏は同社人事部門に所属し、エンジニアとしてのキャリアを経て、現在は新卒エンジニア採用を担当しています。

なぜインド人材で、なぜインターンなのか。3社が語る取り組みの出発点

最初に、数ある高度人材採用の選択肢の中でインドの学生に注目された理由を伺っていきます。

上村氏(artience):背景は2つあります。1つは、当社の海外売上比率を伸ばしていく方針の中、現場のマネージャーから「海外拠点と円滑にコミュニケーションが取れる」「越境に抵抗がない」「新しい視点を持っている」人材が欲しいという声が高まってきたことです。採用自体は国籍を問わず行っていますが、そうしたニーズを満たす社員を見ていくと、自然と外国籍の方が該当することが増えてきました。
もう1つは、当社は化学系エンジニアの採用が多いのですが、日本国内では理系学生の争奪戦が激しい一方、インドには理系人材が900万人もいると聞き、「優秀でもインド国内で就職しきれない学生が多い」という実態を知ったことです。当社が必要とする人材を採用しやすいのではと考え、インドから始めました。

下村氏(IHI):正直なところ、インドではほとんどの日本企業は無名です。トヨタやダイキンといった一部の企業以外は「知らない」という状況で、IHIも知られていない。その状態でいきなり本格的な採用に動いても関心を持ってもらえないと判断し、まずは学生に「日本とはこういう国です」「IHIとはこういう会社です」と知ってもらうところから始めるしかなく、自ずとインターンシップに行き着きました。
もう1つ個人的な理由もあります。前職の楽天ではインドの方と働くのが当たり前だったのですが、IHIに来てインドの方がほとんどいないことに強い違和感を覚えました。「日本はインド経済にこれから支えられる国なのに、インドの人を雇わないでやっていけると思っているんですか」と経営陣に強くアピールして、「まず採用してみろ」と言われたものの、いきなりの採用は難しいのでインターンシップに至ったという経緯です。

中西氏(ワンキャリア):きっかけは社内に実例があったことです。
中途入社したインド工科大学(IIT)出身のエンジニアが非常に高いパフォーマンスを発揮しており、国内のエンジニア採用競争が激化する中で、ここは有力なチャネルになるのではないかと考えました。CTOが「グローバルに活躍できる人材」を採用の方針に掲げていたことも後押しになっています。
もともとエンジニアチームには複数の国籍のメンバーが在籍しており、英語でのコミュニケーションもある程度成立する土壌がありました。とはいえ、当社にはIITとのコネクションはまったくなく、どう接点をつくればいいのかを調べていく中で、Tech Japan様とのご縁をいただいたという経緯です。
今年がインターンシップ受け入れの1期目になりますが、期待していたことは大きく3つあります。1点目は、社内の公用語は日本語なので、英語しか話せないメンバーが増えても組織として機能するのかを試したかったこと。2点目は組織への刺激です。3点目は、来年以降もグローバルに採用していくための関係づくりと、組織的な土壌づくりです。

成果は事業にも、組織にも。受け入れて見えた想定以上の変化

続いて伺ったのは、実際に学生を受け入れてみてどうだったかという点です。良かった点と、率直な課題をそれぞれ挙げていただきました。

中西氏(ワンキャリア):インターンシップを実施して良かった点は、社内の英語コミュニケーションが明確に活発化したことです。これまで英語を使う機会が少なかったメンバーが、自分から積極的に話しかけに行ってくれるようになるなど、社員の新たな一面の発見にもつながりました。
学生のアウトプットの水準も高く、中間発表や最終発表の場では社内から積極的な議論が生まれ、社内でも話題になりました。
一方、1期目ゆえの課題もあります。単年の運用は固まりましたが、複数年で回す仕組みとしてはこれから磨き込む段階であること。そして、英語が流暢なメンバーと日本語中心のメンバーの間で、意思疎通がどうしてもずれてしまう場面があったことです。

下村氏(IHI):インターンシップというステップを踏んで良かったのは、お互いにとっての「プロモーション期間」になることです。企業側は、日本で働くということをどう伝えるか整理する時間が持てますし、学生側も日本の会社で働く自分をイメージし、カルチャーギャップを消化する時間が持てます。いきなりの本採用では、この期間がすっ飛んでしまい、お互いにとって不幸なことが起こりかねません。経営側にとっても、これまで接点のなかったインドの人たちが実際に戦力になってくれるか、また自分たちがそれを受け止められる環境を用意できるかは、正直なところやってみるまでわかりません。インターンという形にすることで、どれだけの人数が実際に動き、どんな苦労が生じるのかが目に見えるようになり、経営側にとっての安心材料にもなったと思います。
言語の壁やビザ取得の苦労は、現場の方からもよく聞きますし、実務を担当する方には確かに一定の苦労があると思います。ただ、私は前職の楽天で、ある日突然買収した海外企業を前準備もないまま統合するという経験をしてきました。それに比べれば、数人のインターンを迎え入れる苦労は、決して超えられないハードルではないというのが正直な感想です。実際、皆さんもちゃんと乗り越えていらっしゃいますし、何も問題はないと思っています。

上村氏(artience):当社は技術トップの発案によるトップダウンで始まったのですが、当初は現場から「今の仕事を止めてまで、日本語が話せない学生を受け入れなければいけないのか」という戸惑いが正直ありました。ただ、実際に受け入れてみると、1を教えたら10を理解してくれるような優秀な学生さんばかりで、少しずつ感謝の声に変わっていきました。周りの社員も、これまで英語を話していなかった社員が、自分から英語で話しかけるようになるなど、職場のカルチャーが良い意味で変わってきています。学生の成長意欲の高さに触発され、既存社員がPythonなど新しい分野の勉強を自発的に始めるという、こちらが想定していなかった動きも出てきています。

成長意欲、誠実さ、素早い適応。ともに働いて見えた学生たちの素顔

次に伺ったのは、実際に受け入れてみて感じた、インド人材ならではの特徴についてです。

上村氏(artience):当社は、昨年3人・今年3人の計6人を受け入れましたが、全員に共通していたのは成長意欲の高さです。面接の段階から、自分のキャリアや知識、そしてインターンシップで何をしたいかをしっかり言葉にして話してくれますし、現場に出てからも言語の壁がある中で主体的に質問し、行動するサイクルがとても速い印象です。

下村氏(IHI):世界中のいろいろな国の方と接してきましたが、年上や先輩を敬う言動が徹底されているところは、比較的日本の文化に近いと感じています。一方、西洋の方には「年齢や役職より能力が先でしょう」というコミュニケーションを取る方もいて、生産性の面では一理あるものの、それに拒否反応を示してしまう日本人もいて、コミュニケーションの機会を損なってしまうこともあります。その点、インドの方の言動には比較的そうした摩擦が少ないように感じます。

中西氏(ワンキャリア):フレンドリーでコミュニケーションが取りやすく、誠実でキャッチアップ能力が高い方が多い印象です。一方で日本では当たり前になっている「周りの空気を読んで動く」「時間厳守で行動する」といった、暗黙の前提を明文化して共有していくことも非常に大事だと感じました。我々にとっての当たり前は当たり前ではなく、そういったルールを一つひとつ一緒に確認していく必要があります。

来日前の準備から日本での生活まで。3社のオンボーディング実践

続いては、オンボーディングで工夫した点を伺いました。

中西氏(ワンキャリア):オンボーディングガイドを10数ページにわたって作成し、学生に事前にお渡ししました。会社概要や大事にしていること、来日時に持ってきてほしいものや服装・気候の情報、初日の空港からホテルまでの移動手順まで綿密に書いたもので、学生の皆さんからとても好評でした。ここまで準備しておくと来年以降の説明もしやすくなりますし、旅行の準備をするような感覚で全部揃えておくことが、来日する学生の安心につながると思っています。

下村氏(IHI):企業として守るべき技術的な秘密は当然お見せできませんが、日本で働くイメージをできるだけ具体的に持ってもらうため、東京や横浜だけでなく秋田などの拠点も回ってもらいました。同じ日本でも拠点によって働く環境はまったく違います。日本語しか案内のないバスに乗ってもらったり、地方の大学を訪れて「学生が意外に英語ペラペラだ」という発見をしてもらったりと、日本という国をトータルでイメージしてもらうための場面を意図的にたくさん作りました。

上村氏(artience):来日直前に空港集合のオンラインミーティングを開き、WhatsAppで随時連絡が取れる体制も整えました。当日は「ウェルカム」のボードを持って空港で出迎え、初日はスーツケースを一緒に運んでアパートまで案内し、近所のスーパーや100円ショップの使い方、電車の乗り方やSuicaのチャージ方法までレクチャーしています。あとは寂しくならないよう、社内にすでにいるインド人社員とのコミュニティをつくり、一緒にランチをする機会を用意したことも工夫の1つです。

トップダウンか、仲間を増やすか。組織規模で異なる社内の巻き込み方

続いてのテーマは、インターンシップを次のステップに進めるために「社内をどう巻き込むか」という点です。

上村氏(artience):当社では、CTOに直接、現場のマネージャーへ「なぜグローバル人材が必要なのか(これからどういう部門に変えていきたいのか)」という思いを語ってもらいました。あわせて、受け入れ部門には事前に「異文化理解研修」をオンラインで受けてもらいました。日本人特有のハイコンテキストなコミュニケーションは世界的に見ると特殊で、「伝わっていると思っていても、実は伝わっていない」というギャップがあることを、研修を通じて理解してもらいました。

中西氏(ワンキャリア):当社の場合は、あまり反発がありませんでした。これは規模による違いも大きいと思います。CTOやCEOと直接会話できる距離感なので、「なぜやるのか」を経営と早い段階で握れました。まずは進められるステークホルダーを押さえ、小さく始めてそこから周囲を巻き込んでいく。この動きが比較的取りやすい状態でした。

下村氏(IHI):3万人規模の組織で仕事をしていると、当然さまざまな考えの人がいて、何かを進めようとすれば必ず反発に遭います。それでも「20年後・40年後の日本がどうなっているか」を想像しながら今できることを探していると、それに反応してくれる方が必ずいますので、そういう方と一緒に少しずつコミュニティを大きくしていく努力をしている最中です。本日お越しの皆さんも悩んでいらっしゃると思いますが、それは当然のことです。一気に解決するのは1人では無理で、少しずつ積み上げて、同調してくれる人の輪を広げていくしかないと思います。

小さく始め、前例をつくる。これから受け入れる企業へのメッセージ

最後に、これからインターンシップを検討する企業に向けて、御三方から一言ずつメッセージをいただきました。

上村氏(artience):インドの学生さんは選考の場面でのアピールが本当に上手で、また応募も想定以上に集まりました。だからこそ、これから検討される企業さんへのアドバイスとしては、受け入れ部門と人事とで「こういうスキルや経験を持つ人材が必要だ」という軸を、選考の前にしっかりすり合わせておくことをお勧めします。また、いきなり採用となると経営層の説得も難しくなるので、「まずは2ヶ月インターンをしてみませんか」という社内提案から始める方が、スムーズに進むことも多いと思います。

下村氏(IHI):当社の取り組みは始まったばかりで、インド出身の方がキャリアを積み重ねて経営陣になったというロールモデルがまだありません。だからこそ1年1年、自分たちで前例をつくっていく必要を感じています。IT業界ではインドの方がグローバル企業のトップになって大成功する例がいくつもありますが、製造業である当社の場合、いきなり経営陣になっていただくというわけにはいきません。その難しさを抱えながらも「なぜ日本の製造業がこういう形になっているのか」を多角的に理解していただけるよう、コミュニケーションを増やしていく必要があると思います。
目指しているのは、いつまでも日本の国内で働くインドの方をつくることではありません。スズキさんやダイキンさん、ユニクロさんがすでに実践されているように、日本企業がインドに進出する拠点を、インドの方自身がつくっていく。単純な従来のオフショアではなく、インドの方によるインドの方のための、日本の看板を背負った経営がインドで実現することが、お互いにとって望ましい形ではないかとイメージしています。
中西氏(ワンキャリア):どんな取り組みも「やってみないと分からない」部分は必ずあります。もし上手くいかなかったとしても、組織にとって得られるものは必ずあるはずです。何か取り組みを始める背景には課題があるはずなので、現状維持を続けるよりも、社内の合意を得た上で一度やってみることをお勧めします。うまくいけば新しい武器が1つ増えますし、うまくいかなくても、その理由を次に活かせるはずです。

インターンシップは、採用だけでなく組織を変えるきっかけになる

総合重工メーカー、化学メーカー、HRテック企業と、業種も従業員規模も大きく異なる3社でしたが、進め方には興味深い違いが見えました。CTOの意思決定で一気に進めた会社もあれば、大企業ゆえの多様な意見と向き合いながら少しずつ仲間を増やしていく会社、経営層との距離が近くスピーディーに合意形成できる会社と、社内の巻き込み方は様々です。それでも3社が声を揃えたのは、実際に受け入れてみて初めて、社員自身の姿勢やコミュニケーションの取り方が変わっていったという実感でした。
この日はパネル終了後に交流会の時間も設けられ、登壇企業3社とインターン生、参加企業の担当者がそれぞれの立場で言葉を交わしていました。

企業の枠を超えて、インド高度人材受け入れの「実践知」を共有する「Talendy Community」のご紹介

今回のイベントは、Tech Japanが展開する「Talendy Community」の取り組みの一環です。Talendy Communityは、インドをはじめとするグローバル人材の受け入れを「企業の成長」へ繋げるための実践型ネットワークです。制度設計や社内整備といった「採用前の初期課題」から、「入社後の定着・活躍」まで、企業のあらゆるフェーズに応じた具体的なメリットを提供します。

【初期フェーズ】受け入れ体制・社内環境のアップデート
「社内整備をどう始めるべきか?」「現場の理解をどう得るか?」といった壁を、先行企業の事例や共通フォーマットの共有でスムーズにクリアできます。
【実利・コスト】最新トレンド・政府補助金の賢い活用
活用可能な政府補助金や助成策、最新の採用トレンド情報をタイムリーに取得。採用・整備にかかる初期投資や運用コストを最適化できます。
【定着・活躍】早期離職・ミスマッチリスクの防止
文化の違いや評価制度で躓かないための「現場で使える定着ノウハウ」を共有。ミスマッチを防ぎ、早期の即戦力化を実現します。
【ネットワーク】経営層・人事担当者同士の「リアルな相談の場」
「他社はどう解決したのか?」を本音で語り合えるコミュニティだからこそ、自社だけで悩まず課題解決のスピードが上がります。

Tech Japanは2019年の創業以来「誰もが最高に輝ける社会を」というミッションのもと、インド高度人材の可能性に着目し、日本企業がインドの力で国際競争力を高めるための支援を続けてきました。インド人材の受入に関心を持つ日本企業は増加していますが、実際の推進には「社内基盤の整備不足」「組織的な合意形成の難しさ」「他社事例の不足」など、様々なレイヤーで壁が存在します。
今後も、企業の枠を超えて実践知を共有し合い、各社の取り組みをより効果的・持続的なものにしていくための機会と場を企画・提供してまいります。

インドの高度IT人材の採用・組織構築についてのご相談は、Tech Japanへお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせは【こちら】から

【京都会場編も公開中】ものづくり3社が語る、受け入れの成果と舞台裏


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本イベント「日印インターンシップ交流イベント」の京都会場編では、精密機器メーカーの株式会社島津製作所、流体制御装置メーカーの株式会社中北製作所、金属部品メーカーの株式会社名友産商という、ものづくり企業3社が登壇。東京編とはまた違う業種・企業規模だからこそ見えてきた、インド人材受け入れのリアルな成果と舞台裏を語っています。あわせてぜひご覧ください。