2024-05-15

Press Release

【レポート】伊藤羊一さんをインドにお連れして_後編「Go Global Reach India!」

前編はインドで受けた刺激と見えたビジョンについて語っていただいたところをまとめました。後編は、日本社会としてインドをどう受け止めていくべきなのか、についての伊藤羊一さんの想いを届けたいと思います。

後編:Go Global Reach India!

 

TJ:日本にも今のインドみたいな成長期がありましたよね

 

伊藤さん:人口が増えるっていうのはやっぱり一義的には正義だなってのは感じますよね。僕は常に、日本は人口が減っている、っていう話を最初にするんだけど、それは悲観して言っているわけではなくてしょうがないんだと。事実だからね、で、その中でどうしていくの?って文脈で話をします。日本にも、もちろん過去人口ボーナス期はあって、そのときは日本が得意な「モノづくり」の時代だったから、日本はそこで大きく成長した。今はITを活用した「コトづくり」の時代で色々なことが自由にできる時代で、インドは人口ボーナス期、これがこの国のエナジーの源泉じゃないかな。

 

TJ:この国が持つ爆発的なエナジー、的なことはインドに今回実際に来ていただいて、初めて実感された部分もあったのではないでしょうか

 

伊藤さん:そうですね、やっぱりこっちに来て、自分の目で見て肌で感じてわかったし、そうじゃなかったらわからなかったとも思います。なんだかんだで日本のオフィスにインド人の方が数十名働いているのを見ても「毎日カレー食べるの?」とか「ナマステって挨拶するの?」っていうくらいのコミュニケーションで終わっちゃっていました。交流できる絶対数もまだ少ない気がしますしね。そんな中で、*西山さんとか**村上さん、武鑓さんとか***蛯原さんみたいな方が何年も前からこの国にコミットされてきたことからすると、遅いのかもしれないけど、改めてここだなって感じることができました。

*西山さん:Tech Japan代表の西山直隆
**村上さん:インキュベイトファンド・インディア設立者の村上矢氏
***蛯原さん:リブライトパートナーズ代表の蛯原健氏

 

TJ:ここだな、に出会ったという感じだったんですね。それはすごく良かったです!
羊一さんは、EMCの他にも講演や研修などを通じて日本の大企業の方達とも繋がっていらっしゃいますよね。そういう方々にも「インド行こうぜ!」って思われますか?

 

伊藤さん:大企業といっても、インドに関していうと2種類あるなと。例えばダイキンとかパナソニックの人たちはもう来てるわけですよね。ここに来てるっていうことは世界のどこにでもに出ていこう、というフロンティアマインドが以前からあるわけですよねですよね。マニファクチャリング全体でいうと、日本の国内でやってたって成長は難しいからみんな国外には出ていくと思うんだけど、インドにはあまり来ていないんじゃないでしょうか。だから、企業として進出してガンガン行くことは素晴らしいって思います。もちろんどの企業もそれぞれ考えているんでしょうけどね。

 

あと、ビジネスパーソン一人一人にしたって、新規事業とか考えるときに一つの重要なマーケットとしてここを捉えるみたいなことがあってもいいし。僕は虎ノ門のARCHという大企業の事業改革や新規事業創出をミッションとする組織に対するインキュベーションセンターのメンターをしているのですが、そこにいらっしゃる皆さんにとっても、とりあえずインドというめっちゃ新しい市場があるのですから、進出する可能性を考えてもいいし、目指す先がインドじゃなくても、まずここに来て色々チャレンジして、ネットワークを作りながら他のエリアに行ってもいいし、まずはやってみればいいんじゃないか、とは思いましたね。

 

会社としてこの市場を体験することは、もちろんひとつの学びになる。アントレプレナーシップを持った人たちにたくさん出会えるし、それからビッグピクチャーを描くみたいなこともきっとインドで学べますよ。

 

だから、スタディツアーとかやりまくったらいいよなっていうのはあります。スズキさんがやられている*プログラムとかもね。ちっちゃなマーケットで悩むのではなく、ビッグピクチャーを描こうぜと。Don’t Think, Just Feelっていうことが大事。

 

*プログラム:ハイデラバードにあるスズキイノベーションセンターが実施しているLIB/Learn In Bharat(注:インドのこと)プログラム

 

 

TJ:確かに今のインドを体験することは、一つの学習になることは間違いないですね。アントレプレナーシップを持った人に出会うのが重要だよっていう点に関して申し上げると、その点を弊社(Tech Japan)も強く感じていて。日本企業はインドの方を仲間にしましょうと。仲間になって、組織としてダイバーシティを構築して一緒に事業を進めていくことで、叶えられることが二つあって、一つは彼らが持ってる人生に対するアントレプレナーシップやアグレッシブさから学べるっていうところと、もう一つは日本にデジタル人材が足りないっていうところと、まあ両方あるんですけど。

 

伊藤さん:Tech Japanが橋を架けようとしている、つまり日本企業に対して思うところでいうと、例えば日本語しゃべれる人じゃないと仲間にはなれない、みたいな感覚だと前述のビッグピクチャー感って感じられないんじゃないかな。(組織としては)確かにボトルネックになるかもなんだけど、大企業の人もスタートアップの人も、どうしても具体的な課題は色々あるだろうし、実際言語の壁だって解決していかなきゃいかないんだけど、とにかくぶち壊して、まず受け入れてみようよ、みたいな感じはありますね。エンジニアリングの領域でいうとプログラミングとかものづくりとか、共通のテーマがあるとどんどんコミュニケーションは取れる。軽々しく言いたいんじゃなく、一緒に仕事をしていれば片方か、両方かが何かを習得していくだろうし、エンジニアの言語は共通なんだから、まあガンガンやっていこうよと思っています。

 

日本企業がインドに来て自分達をかき混ぜたり、日本にインド人が来てアントレプレナーシップを持ったマインドに出会ったり、その逆だったりといった両方の行ったり来たりを起こすと、かき混ぜ感がカオスになるかもだけど、そこから出てくる新しいビジョンがありそうじゃないですか。そうしなきゃ、日本企業はもう生き残れない。(生き残るための)「何かプランはありますか?」「ストラテジーはありますか?」っていうのは、当然会社としても考えてほしいし、会社だけでなく一人一人のビジネスパーソンにも「それで生きていけるの?」って問いたいんですよね。僕らも大学の学部を作るだけでは生き残れないからチャレンジしているわけだし、企業でも、チャレンジされているところはオワコンにならず生き残っていけると思いますね。その感覚に触れるためにも「ひとまずインドに行けや」というのはあります。

 

 

TJ:今のプランだと生き残れないけど勝ちプランもないってわかったときに飛び込めるか、チャレンジできるかというのも、重要ですよね。

 

伊藤さん:そうそう。どんな効果が生まれるんでしょうかとか訊かれるんだけど、そんなの聞いたところで(今のプランだと)この先、生き残れない。日本の大企業で研修とか講演とか色々やるんですけど、どこの大企業もその企業にスペシフィックな問題とかなくて、みんなコピーしたかのように同じ悩みを抱えてモヤモヤしてるんです。で、喝入れてくださいっていうオーダーがめっちゃある。そういう人たちに「突き抜けろ」ってずっと言ってきたんだけど、「インド行く」っていうのがその具体的なソリューションになりうると、今回よく分かりました。

 

今までの30年間(日本は)悩み続けたんですよね。それが失われた30年。これからはもうアントレプレナーシップマインドを持って、受け入れようよって。最初から5人正社員で雇用、とかの状況まではすぐ持っていけなくても、インターンシップとかを活用すればめちゃくちゃいい具体的なソリューションになると思いますよね。そういう意味では、Tech Japanの存在価値がめちゃリアルにわかりました。

 

TJ:ありがとうございます!

 

伊藤さん:真面目な話、そこに日本企業にとっての戦略がある気がします。ウォーターフォールで会社がターンアラウンドすることなんて絶対にできないわけですよ。
だからアジャイルでやっていく必要があるんだけど、もちろんそれが「ハズレ」になったら企業としてはよろしくない。でもね、インドだときっと、確実に成長するから、外れないわけですよね。刺激もめちゃ大きいし。だからここでガンッとやるのをソリューションにしたらいいやんって。僕すげえインスパイアされやすいところもあるんだけど。

 

TJ:インスパイアされやすいっていうことは、たくさんインスパイアされていて、素地がおありってことですよね。他のインスピレーションと比較しても、インドの刺激は大きかったですか?

 

伊藤さん:大きいですよ、だって他のところ行ってこんなこと思わなかったですもん。初めて来たからとかじゃなくてね。ほかのところに行っても、大事な事言ってるな、すごいなとは感じます。それで日本で(落とし込んで)こんな感じで頑張ろうか、とはなるんだけど、ここでは何ていうか、面とか線としての繋がりを作りたいなと考えるようになりましたね。

 

 

TJ:マニファクチャーの話が出ましたね。もちろん日本にはメーカー以外の企業さんもたくさんある中で、マニファクチャーが生き残っていくためにもソフトウェアの知見や技術っていうのがすごく必要になってきています。

 

伊藤さん:そうなんですよ。日本の企業ってプロダクトを作ることはめちゃ強いんだけど、あれとそれとこれを繋いで「システム(体系)」にする思想ってやっぱり弱いところがあるわけで。そうすると、インドで僕が見たソフトウェアとハードウェアがセットになっている世界っていうのは、学びの材料としてもめちゃめちゃ重要だと思いました。「『これ』を作ります」「○○屋」っていうのから脱却しなきゃいけない、だからスズキもそれを頑張ってる。

 

こういうことって頭で考えるだけだとできっこない、だって今まで(も考えてきたけど)できてないんだもん。だから「インドに来い」みたいな話をここから1年ぐらいは毎日続けられるくらいには今回刺激を受けましたね。

 

TJ:1年間おっしゃっていただけるということですが、1年以内にもまた来てください。インドには可能性しかないと言われていますし。タイミング的にも10年前と違って、今は少しコンフォータブルな可能性にもなってきています。

 

伊藤さん:可能性しかない的な言葉はずっと僕も聞いてて「ふうん」という感じだったんだけど、もうね、可能性しかないんだなって確信して、「可能性しかないなら今ここを掴まないでどうする」っていう気持ちです。こういう感覚は初めてかも。これはもうリアルアントレプレナーシップだな、と。「いつ来るの?今でしょ!」っていう事が全然誇張じゃない。インドに来る人はみんなそう言いますもんね。このカオスの雰囲気を最高と思うか、思わないかによって(受け取め方は)違いがあるだろうけど、僕なんかはもう「生きてるね」っていう感覚を持ったし、魅かれました。

 

TJ:敢えてお伺いすると、誰がインドにおいでになっても同じように感じて下さるのかな、という疑問があったりもします。そこについてはどうお考えでしょう?羊一さんは特に柔軟性や好奇心がおありですよね。

 

伊藤さん:柔軟性や好奇心がないって人こそ、まず刺激を受けに来た方が良いですよ。そして、刺激を受けたら、インターンシップみたいな感じで、具体的に年に数日でもいいからインドを感じる機会を作る。クリケットも見たりね(僕は今回初めて見ました)。そして、そこからようやくリアルにビジネスを考えられるようになる。だから、スタディツアーとかめっちゃやってほしい。自分探しとか長い間している人も、インドに来たら何かが見つかると思います。

 

スティーブ・ジョブスもインドで刺激を受けたわけだしね。インドに来る前は、結構この国ってツンデレなんじゃないかって思ってたんだけど、実際は違ってて。ここに来てインドの人が人助けしたり、いつも笑顔でいるのも、なんかルールとしてではなく、多様性があるカルチャーの中で育ってきたからこその、ナチュラルボーンなダイバーシティがあるなと。

 

TJ:多様性についても、比較的同質性が強いと言われる社会を持つ私たち日本人は学ぶところがありそうですよね。

 

伊藤さん:日本人にも実はそういう受容性があると感じる時もあるんだけど、インドから得られる示唆は確かにありますよね。例えばそこにインド人しかいなくても、インドそのものが言葉も何もかも多様なダイバーシティだから、すでにダイバーシティがあるんだってことを誰かおっしゃってて、それはめちゃ新鮮な喜びでした。そうかって腹落ちしました。
こうやってしゃべってみると、もうあれだな、インドに惚れてしまった人になっちゃいましたね。みんなインドに行かないと!

 

TJ:今後とも、ぜひ一緒によろしくお願いいたします!ありがとうございました!