2024-04-15

Press Release

【レポート】伊藤羊一さんをインドにお連れして_前編「10年で一番の刺激とアントレプレナー育成へのビジョン」

伊藤羊一さんご一行をIITハイデラバード校とIITボンベイ校にお連れしました。伊藤さんにとっての初インド、初IITの印象を前編後編に分けてお伺いします。

 

前編:10年で一番の刺激とアントレプレナー育成へのビジョン

 

 

 

TJ: インドは初めてということでしたが、印象はいかがでしたでしょうか

 

伊藤さん:コロナ禍もあって最近はあまり海外に行けていなかったので比較できない部分もあるのですが、何というか、インドで今僕が味わっている「えもいわれぬパワー」みたいなのは、日本にいるとあまり感じる機会はないですよね。シンガポールとか東京はすごく美しいし、オーガナイズされていて整然としているんだけど、このレベルのエネルギーを東京で感じたことはほとんどなかったな… (今回訪問した)ハイデラバードにしても、ムンバイにしても、課題もたくさんあるし街もカオスではありつつも、*人口が多くて成長してるから、すごい数の人々が可能性を信じて生きてるんだってことを実感しました。

 

先月ジャカルタに行って、ジャカルタでもエネルギッシュな、成長している都市だからこそのエネルギーを感じたんですが、それを超える「うわぁすげー!」みたいなエネルギーを感じたっていうのがまず最初の印象です。

 

*2023年で14億人

 

TJ:初インドから刺激を受けつつ、IIT2校(ハイデラバード校及びボンベイ校)やインキュベーション施設を訪問されましたよね

 

伊藤さん:町並みから刺激を受けつつ、実際にIITに行って感じた、というかびっくりしたのは、やっぱり当たり前なんですけど工科大学、Institute of Technologyというところのテクノロジーの種類に「ものづくり」へのフォーカスがあるということですね。大学だけではなく、スタートアップのインキュベーション施設にも、ものづくりの設備がかなり整っていたんです。僕らがテクノロジーって考えるときはともするとプログラミングとかソフトっぽいものに帰結しちゃいがちです。もちろんプログラミングも大事なんだけど、やはり物理的なモノによる課題解決があって、ディープテックと呼ばれる領域に繋がっていくんだということを実際に自分の目で見て刺激を受けました。

 

ハードウェアとソフトウェアをセットにして課題解決していくことのリアルさ、というか。日本だと、課題について仮説を立てて検討しなければならないし、解決方法もプログラミング?AI?モノ?みたいな形で分かれて実現していくという感じがある。そこと比較するとインドは、僕の仮説になるけど、そもそも課題がリアルに横たわっているし、ハードウェアとソフトウェアがコンビネーションになっていて、地に足がついた形での課題解決が追求されている印象を持ちましたね。

 

 

あとは、IITボンベイの学内インキュベーション施設(SINE*)でスタートアップの人たちと話す機会があったのですが、メンバーは学部生より、修士とか博士課程の人の割合の方が多かったんですよ。結核に関するデータやゲノムの分析を行ったり、R&Dやってソリューションについて語っていた方たちもとてもマチュアだな、と。SINEのお偉いさんかと思ったくらい笑
印象論かもしれませんが、キャリアとして就職か起業かを考えるとかじゃなくて、課題解決のために必要なことをやっていたら、人によってはアントレプレナーになるし、人によっては会社に入るんだろうな、ってそこらへんも非常に地に足がついている印象です。

 

*Society for Innovation & Entrepreneurship:IITボンベイのインキュベーション機関

 

TJ:確かによく考えたら起業か会社員かっていう選択肢で考えるのも変な話ですよね。

 

伊藤さん:ナンセンスなんですよ。起業とか会社に入るって手段なわけで、なにをしたいか。どういう形で課題を解決したいかが重要でしょう。だからこそ、僕らは、EMC(武蔵野大学アントレプレナーシップ学部)でも「会社に入るか。社会を創るか。」っていうキャッチコピーを発信しているんですが、インドに来て、めちゃめちゃ短い間だったけど、ここではそういうスタンスが当たり前に浸透してるのだと気づけました。

 

TJ:今回のインド体験を経て、「EMCの将来についてビジョンが湧いた」というお声を伺えてすごく嬉しいんですが、見えたものがあったという感覚がおありですよね。

 

伊藤さん:学部2年次に海外に行く短期のフィールドスタディ(必修)を設けていて、その候補地としてインドは考えていました。今回インドに関して改めて感じたのは、特に東南アジアが持っている日本人にとっての身近さや、日本企業の進出による知見みたいなものがまだまだ少ない未知な世界だということです。単純に短期のフィールドスタディに来るだけではなく、繋がりをもってインターンをしたり受け入れたりという諸々を重ねて、僕が持っている日本の企業との繋がりも活用しながら、EMC学生のアントレプレナーシップをリアルに解き放ちたいな、と。
ここを「アントレプレナーシップを学ぶ場所」にするんじゃなくて、インド&日本、とかインド&日本&東南アジアそのものを「活躍のフィールド」にしたい。そのためには、学生たちを送るだけじゃなくて、先に我々ファクルティ(教員側)がインドに行って支局的な場所を作り、*津吹さんが駐在して、点ではなく面で動ける、“EMCインディアみたいなもの”を作りたいと思っています。グローバルをどうやって実現していくか、みたいなことはずっとこれまで考えていたんだけど、ここに来て「インドに来ないとあかん!」というのはほぼ確信に至りましたね。

 

で、インドにどうやって深く入り込むかって言ったらまだそこのイメージは湧ききってはいません。ただ、IITボンベイの人たちは、僕の**セッションが終わった後も、みんな寄ってきてくれて、名刺を渡してくれて、日本に行きたいとか、インターンシップあるのかとか色々訊いてくれるんですよね。リップサービスだったら残って訊いてくれたりはないんじゃないかな、多分ね。

Nice to meet you的な挨拶じゃなくて、日本というマーケットに可能性を持ってくれている人がいるんだなと感じましたよ。にも関わらず、まだこの国に日本人は8,000〜9,000人しかいない。こんな状況で、しかもアカデミックなアントレプレナーシップ領域でインドに進出、っていったらブルーオーシャンじゃないですか。そんなことやってるアカデミック(な存在は)いないから。そこにめちゃめちゃ可能性を感じたんです。

 

*津吹さん:武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 津吹達也教授
**セッション:IITボンベイで伊藤さんが行ったセミナーJapan’s start-up ecosystem: How can you enter Japan & see for yourselfのこと

 

IITボンベイとか、テック領域で世界的にみてもトップレベルの大学で、僕自身はテクノロジーサイドの人間というわけでも、EMCとかも全然関係なさそうに見えるかもしれないけれど、考えようによってはそういうところ同士が繋がりをもって何かやる可能性は十分あるよな、と。インドや日本に対する思いやそれぞれの性質とか、背景には色々あるでしょうが、他の地域、国と比較してもこの可能性は全然あるな、と思いました。肌感で倍くらい!(笑)同じ目線で語ってくれるっていうんですかね、東南アジアでも感じましたが、同じアジアとしての仲間意識をすごく感じました。

 

TJ:確かにIITの方々は先生方をはじめ、皆さんとても暖かく迎えてくださいましたよね。加えて日本やその市場に対する興味があったから羊一さん日本のことを教えてくれてありがとう、っていう気持ちがあったのかも知れません。

 

伊藤さん:僕自身が関わっているLINEヤフーにもインド人のエンジニアがたくさんいるし、PayPayでもインドのテクノロジーが使われています。また、周りでも*奥田浩美さんがご自身の経験からインドのことを仰っているのをよく見てきたし、**武鑓さんからもインドのエンジニアの数は桁が違うとも教えてもらっていました。テクノロジーの世界で今インドって本当に最も勢いがある。そんな人達が多少でも僕たちの話を聴いてくれる、歩み寄ろうとしてくれるなら、行かない理由なんてどこにもないよって感じです。

 

*奥田浩美さん:株式会社ウィズグループ代表取締役。ムンバイ大学大学院卒
**武鑓さん:Tech Japanアドバイザー・元ソニーインディア社長の武鑓行雄氏

 

 

何かしら光明が見えるところには突っ込んでいかないと、新しく作った学部の未来はなかなか創っていけない。我々のやっている教育の中で、アントレプレナーシップってこういう風にやれば育ってくる、というセオリーみたいなものは国内で授業をやる中で見えてきたものがあるんだけど、そこからどうすればジャンプさせられるかにはずっと悩んできたから…一定の成長を経たあと、そこから飛び立たせるには刺激とか新たな環境が必要で、そのきっかけが、ああインドなんだなとしっくり来ました。

 

ちょっとアホみたいに思われるかもしれないけど、僕はEMCもインドもどっちもグローイング-Growingでライジング-Rising同士じゃんって感じたんですよ。こういうことを話すと、数日でかぶれてんじゃねえのって感じる人が、多分日本の中にいると思うんだけど、そういう人たちにこそ、「そんな事言ってないでこっち来なよ、インドに行こうよ」って強く言いたいですね。

 


→後編に続く